マインドフルネスがなぜ不安や抑うつに効くのか~“反すう”に着目して~(研究報告)

野田昇太先生

今回は,マインドフルネスがなぜ不安や抑うつに効くのかについて,私がこれまで行ってきた研究から説明していきたいと思います。マインドフルネスとは,“今この瞬間に注意を向け,価値判断しない心の在り方”です。静座瞑想やヨガ,ボディスキャンをすることによって,このマインドフルネスの状態が獲得されます。多くの研究から,マインドフルネスが不安や抑うつに効くということは明らかにされてきました(Hofmann et al., 2010)。では,どうしてマインドフルネスが不安や抑うつの改善をもたらすのでしょうか。そのことについては,多くの先生方が議論してきましたが,研究としては,十分に整理されていないのが現状です。
そこで,野田ら(2018)は,反すうに着目をして,マインドフルネスが不安や抑うつに影響を及ぼすプロセスを検討しました。そもそも“反すう”とは,「繰り返し過去の出来事を考えてしまうこと」です。「どうしてあんなことしてしまったんだろう」とか,「こうしとけばよかった」など,もう終わったはずの過去の出来事にとらわれ,繰り返し考えてしまうことが“反すう”に当たります。この反すうは,不安や抑うつを高めてしまいます(城月ら,2007)。野田ら(2018)は,マインドフルネスにより,反すうが減少し,不安や抑うつが改善するプロセスがあるのではないかと仮定し,そのプロセスを検討しました。
研究の結果,仮説通り,マインドフルネスの状態が反すうを媒介して人との関わりで生じる不安や抑うつ症状に影響を及ぼすことが示されました。すなわち,マインドフルネスの状態が高くなると,過去に対して繰り返し考えること(反すう)が減少し,人との関わりの中で生じる不安や抑うつ症状が改善される可能性が示されました。
過去にとらわれ,繰り返し考えてしまう傾向のある方は,マインドフルネスが有効かもしれません。過去のことについて繰り返し考えることを止めたい人は,ぜひ,マインドフルネスを実践してみてください。

この野田ら(2018)の研究は,学術雑誌の行動医学研究の24巻に記載されています。このコラムで述べられていないものもあるので,ぜひ検索してみてください。詳細は下記に示しています。

野田昇太・大川 翔・城月健太郎(2018) マインドフルネス特性と反すう,注意制御機能,社交不安,抑うつ症状との関係性 行動医学研究,24巻,pp 12-21
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbm/24/1/24_12/_article/-char/ja