社交不安とマインドフルネス(ポスター発表の内容報告)

野田昇太先生

2019年3月1日~2日に岐阜県で実施された第11回日本不安症学会学術大会でポスター発表を行ってきました。演題は,「社交不安に対するマインドフルネスを導入した認知行動療法の症例研究」です。その内容を報告します。
そもそも社交不安とは,“人との関わりの中で生じる不安”のことです。人は,ほかの人と関わりながら生活しています。人との関わりで,不安が生じることは正常なことです。その不安があるからこそ,人は他者に対して適切なふるまいをしようと努力します。しかし,その不安が強すぎて,生活に支障が出てしまう場合は,社交不安症と診断される恐れがあります。
社交不安症に有効な介入として,認知行動療法やマインドフルネスを用いた介入が挙げられます。私は,マインドフルネスと認知行動療法を併用させ,社交不安の改善に特化した介入法を開発することで,より効果の高い治療法を患者さんに提供できる可能性があると考えました。そこで,マインドフルネスを導入した認知行動療法を開発し,その有効性を検討いたしました。
プログラムは,週に1回,90分,全4回のプログラムで,マインドフルネス・トレーニングと,心理教育(社交不安とマインドフルネスについてのお勉強),認知的再構成法(自分の思考パターンを見つめて,否定的な思考を変えていく方法),体験のシェアリングで構成しました。このプログラムを社交不安の高い大学生8名に受けてもらいました。
その結果,マインドフルネス特性(今この瞬間に注意を向け,価値判断しない心の状態)が向上し,否定的に考えてしまう傾向,他者からの否定的な評価の恐れが減少することが明らかとなりました。また,マインドフルネス特性の向上には,介入後とフォローアップで高い効果量(Five Facet Mindfulness Questionnaire合計:d=1.60,1.03),否定的に考えてしまう傾向には,介入後とフォローアップで高い効果量(Speech Cost/Probability bias Scale-Probability:d=1.51,0.93),他者からの否定的な評価に対する恐れには,フォローアップで高い効果量(Short Fear of Negative Evaluation Scale:d=0.81)が算出されました。つまり,マインドフルネスを導入した認知行動療法は,マインドフルネス特性の向上,否定的認知および他者からの否定的な評価に対する恐れの低減に対して,強い効果があることが示されました。上記から,マインドフルネスを導入した認知行動療法により,社交不安症状が低減するといえます。今後,より高いエビデンス(科学的根拠)を示すために,さらなる検討を行っていきます。